2月の節分から始まった年中行事と行事植物について
6月は年中行事がなかったためお休みしていましたが、
今月は「七夕(たなばた)」と「竹・笹」についてです。
七夕といえば、7月7日の夜に、
わし座の牽牛(けんぎゅう)星(アルタイル)と、
こと座の織女(しょくじょ)星(ベガ)が
1年に一度出会うとされている彦星と織姫の伝説は有名ですね。
このロマンチックなお話とともに、
なぜ竹・笹を立てて、様々な願いを短冊に書いて託すようになったのでしょうか。
今回は七夕の起源をたどり、
伝説の世界の裏に秘めた竹・笹の力を読み取っていきたいと思います。
古代、水辺の小屋に閉じこもり、神にささげる布を織りながら
年に一度、水のほとりで水神を待つ棚機女(たなばたつめ)がいたといわれています。
この棚機女と天の川で年に一度、織姫と彦星が再会する中国の織女伝説が
うまく一致し、我が国の七夕になったとされています。
こうしたことから、本来、七夕は水の神様を迎える儀式であったため
お正月の門松やしめ縄飾りと同様に神様が降り立つ目印として、
天に向かって真っすぐに伸びる生命力あふれる姿と、葉に強い
抗菌効果を持つ、竹・笹が七夕の行事植物として使われるようにな
りました。
また、竹・笹は歌にも歌われるように「さらさら」と音を立てる葉擦
れの音も、神様を招く音として使われるようになったと考えられてい
ます。
七夕に関連する植物は、ほかにもあります。
梶の木
七夕飾りに欠かせない短冊ですが、
前身は紙の原料にも使われた梶(かじ)の木の葉が使われていました。
下の絵図にあるように江戸中期、寺子屋では七夕の朝に、子ども達が梶の葉と清書用の短冊に文字を書いたそうです。
当時の願い事とは、あくまで書の上達であったとされています。
『拾遺都名所図会ー七夕梶葉流』国際日本文化センターより
梶の木は山野に野生化していますが、街中ではなかなか見かけない木です。
今回、市内の公園から採取した梶の木の葉を少し展示していますので、ぜひご覧下さい。
また、「緑の相談所」と「みどりのみゅーじあむ」に、
ボランティアさんと作った七夕飾りと五色の短冊をご用意しています。
上:緑の相談所
下:みどりのみゅーじあむ
5色の短冊を用意したのには、意味があります。
中国の「陰陽五行説」と「五常(五徳)」に由来しています。
※陰陽五行説
自然界すべてのものが
木・火・土・金・水の5つから成り立っている考え方です。
青(緑)⇒木
赤⇒火
黄⇒土
白⇒金
黒(紫)⇒水
※五常(五徳)
人の心と行動を仁・義・礼・智・信の5つに当てはめる考え方です。
青(緑)⇒仁:思いやり
赤⇒礼:礼儀
黄⇒信:誠実
白⇒義:正義
黒(紫)⇒智:知恵
青(緑)の短冊は、人間力を高める、徳を積むことを表し、
「いろいろなことに挑戦して、頑張る気持ち」を託します。
赤の短冊は、祖先や親に感謝することを表し、
「おうちの人へ、いつもありがとうと思う気持ち」を託します。
黄の短冊は、人を信じ大切に思うことを表し、
「友達や家族を大切に思う気持ち」を託します。
白の短冊は、義務や決まりを守ることを表し、
「ルールや約束を守ろうとする気持ち」を託します。
黒(紫)の短冊は、学業の向上を願うことを表し、
「勉強や練習をして、いろいろなことが出来るようになりたい気持ち」を託します。
風が吹き、竹・笹がざわつくことが神の降臨ととらえた古代の人々の思いを感じながら、
今のご自身の気持ちに寄り添った五色の色の効力に願い事を託してみてはいかがでしょうか。
(説明文の一部は、湯浅浩史さんの著書「植物でしたしむ、日本の年中行事」より引用しています)