花の季節です。
園内では、さまざまなお花が春の光の中きらきらと咲いています。
今回お伝えする、年中行事はこの季節にぴったりな名前の「花祭り」です。
「花祭り」は、四月八日お釈迦様の誕生を記念して催されます。
花で飾った花御堂に誕生仏を水盤に安置し、
その頭上から竹のひしゃくで甘茶を注ぎます。
(甘茶の原料は日本原産の落葉低木アマチャです。
アジサイの仲間で見た目もそっくりです。
葉を乾燥発酵させると強い甘みが生まれ、お茶のようにして飲むことが出来ます。)
仏教行事として馴染みが深いですが、花を献じて豊作を願う儀式は、
古代日本でも行われており、その意義や願いが「花祭り」の底には流れています。
かつては四月八日には山に登り、山の神を祭り、
花見をする風習が東北から南西諸島に広く見られました。
秋の収穫後に山に帰った神を再び田に迎えるために、
四月八日を山の神の来臨の日とするしきたりがあったそうです。
サクラの花で豊作を予祝した花見にも通じるものがあり、
日本の基層の花文化です。
「サクラの花見」は昔は風流な遊びではなく、
集落全体が共同で行う農耕儀式であったとされています。
サクラの開花によって農作物の出来具合を占い、
サクラの花色が早くあせると夏の天候は良くなり、
サクラの白花が多く咲く年は豊年であり、またヒガンザクラが上向きに開けば
天候不順になるなどのことわざは、サクラの花と農耕の結びつきの証明となっています。
また、暖かくなるにつれて農作業は忙しくなることから、
花見はその前のひとときの憩いでありました。
現代においては、もはや古代の人が祈った豊作の願いに気付く人はいないとは思いますが、
サクラを愛でるだけではなく、そうした古代の人の願いに思いを馳せて、
今年の花見は楽しんではいかがでしょうか?
当園のサクラは花盛りまっただ中です!
(説明文は、湯浅浩史さんの著書「植物でしたしむ、日本の年中行事」を引用しています)