日に日に寒さがやわらいで、園内では開花が遅れていたウメやフキノトウが咲きだしました。
春らしい気配もそのはず、明日は3月3日桃の節句(ひな祭り)です。
女の子の健やかな成長と幸福を願う日として行われる伝統行事で、
ひな人形と桃の花を飾り、草餅を供え、白酒でお祝いをします。
なぜこの日に桃の花が用いられることになったのでしょうか。
ただ偶然にその時期に咲いているお花を飾った、というわけではありません。
桃が秘める力が関係していたとされています。
所説ありますが、一つは桃に鬼が恐れる威力があると信じられていたからです。
中国の古書にも、桃の木の下には二人の神が鬼を見張っていて、人に害をおよぼす鬼を退治すると記されています。
古代中国では、三月に桃の花が流れる川の水を飲んで禊をし、穢れを払っていたそうです。
二つ目として桃の花の明るさにあったとされています。
桃は暗い冬をやぶり陽の花を咲かせます。若い華やいだ明るさが桃の花に備わっているからです。
三つ目は漢字にその意味が秘められているとされています。
漢字の桃は木へんに兆(きざし)と書きます。
兆は吉凶を占うため亀の甲や牛の肩甲骨を焼いた際に入るひび割れから象形された字であり、
古い桃の品種では、桃の核(種を含む硬いカラ)に少し力を加えると二つに割れるため、
その二つに割れることが兆となったといわれています。
桃の木は神仙に力を与える「仙木」とされ、古くから桃の木で作られた弓矢を射ると悪鬼除けとなり、
枝を畑にさすと虫除けになるとされてきました。
こうした桃が秘める力を信じて、子どもの健やかな成長と幸福を願う日の行事植物として、
その花が用いられるようになりました。
今回は、桃の節句の行事植物である桃の花を、当所の玄関に飾ってみました。
皆さんも、かわいいひな人形と一緒に、あらためて桃の花の意味を想い、
ご家族で桃の節句を楽しんでみてはいかがでしょうか。
明日、3月3日(月)に桃の小枝を数量限定で配布します。
幼い頃のひな祭りの思い出として、ふと桃の花が思い起こされますように。
(説明文は、湯浅浩史さんの著書「植物でしたしむ、日本の年中行事」より引用しています)